アメリカはM&Aが非常に盛んな国として広く知られていますが、2024年におけるアメリカでのM&A取引量は、なんと全世界のおよそ半分を占めていました。
ではアメリカでM&A・投資ビジネスが盛んな理由にはどのような背景があるのでしょうか。今回はその理由と米国市場の概観や投資環境について、ご紹介していきます。
米国でM&Aが盛んに行われている理由として、大きく二つの要因、歴史と事業に対する考え方に由来していると考えられています。
アメリカにおけるM&Aの歴史と投資手法
まず、米国においてのM&Aの歴史は古く、1900年代の前半からM&Aとしての取引が行われており、長い年月をかけて国民の生活に染みついています。
M&Aを行う上で重要になる取引のスキームや財務指標など、様々なツールの多くは米国で考案され、各国がそれらを模倣して使用しているというような流れができあがりました。
日本のM&A取引においてもEBITDA (イービッダー)やマルチプル、DCF法(Discounted Cash Flow)など多くの横文字が使用されておりますが、これらは主に米国で考案されたファイナンスのツールです。
長い年月と様々なトライアンドエラーを経たM&Aの手法や知識は米国ビジネスや投資家にとって重要なツールとして考えられており、企業成長に必要不可欠なものとして位置づけられています。
アメリカの投資環境と日本企業との比較
米国でM&Aが盛んに行われる理由の二つ目に事業に対する考え方が挙げられます。
米国では事業戦略に応じてポートフォリオの入れ替えなどが積極的に行われており、非常に上手く行っている事業であっても、今後の会社のビジョンや戦略に適していないと考えられた場合、売却対象となります。
対して日本企業の場合では、少々将来のビジョンや戦略と合致していなくても、業績が好調であれば保有し続けるといった傾向があり、売却に踏み切るタイミングは、事業の業績が悪化して損切のようなかたちでの売却というケースが散見され、実際の売却が難航することも多いです。
このような考え方の違いから、米国では優良なアセットが市場に出回りやすい環境にあるため、M&A取引の流動性も非常に高く、投資先としての魅力も大きいと考えられています。
アメリカのM&Aにおける企業規模別の分類
一言にM&Aと言っても個人経営の小さな会社から世界各地にオフィスを構える上場企業までM&Aの規模は様々です。普段ニュースや新聞で取り上げられるような案件は一般的に大型の案件である場合が多く、小・中規模の案件についてはあまりなじみがない方も多いかと思います。
ではM&Aを行う企業にはどのような種類が存在するのでしょうか。一般的に米国M&A市場の概観は事業の年間売上サイズごとに大きく5つに分類されます。
Name of Market | Annual Revenue |
---|---|
Large |
$1B < |
Upper Middle Market (UMM) |
$500M – $1B |
Middle Market (MM) |
$50M – 100M |
Lower Middle Market (LMM) |
$5M – $50M |
Micro |
< $5M |
Large Marketとは
年間の売上高が$1B超の会社を対象としており、同サイズのM&AはTVや新聞のニュースで取り上げられることも少なくありません。取引サイズの大きさや複雑さから、案件完了まで長い期間を要することもあります。
独占禁止法や各種当局からの許認可などの法務面、諸外国に子会社やグループ会社がある場合の税務面など検討事項は多岐に渡ります。
UMM : Upper Middle Marketとは
年間の売上高が$500M – $1Bの会社を対象としており、Large Marketの案件と同様にTVや新聞のニュースで取り上げられることもあります。
Large Marketほどの超大型案件とはならないものの、M&A市場の全体感から観察してみると、UMMは非常に大きな売上規模の会社に該当し、同サイズ帯に該当する会社は米国市場全体のわずか1%程度となっています。
MM : Middle Marketとは
売上が$50M – $100Mの会社を対象としており、その内訳は長い歴史を持ち成功したファミリービジネスや急激な成長を遂げたIT系会社など様々です。
MMに該当する会社では特定の地域で非常に高いプレゼンスを持っていたり、非上場会社ながら海外に拠点を有していることもあります。米国市場においてはおよそ17,000 – 18,000社程度がMMに該当すると推測されています。
LMM : Lower Middle Marketとは
売上が$5M – $50Mの会社を対象としており、米国に存在する事業の多くがLMMに該当します。
LMMに属する主な事業は個人事業主や家族経営の小規模会社となっており、業種についてもレストランを始めとする飲食店や美容サロン、建築関係事業や各種サービス業など多岐に渡ります。
Micro Marketとは
売上が$5Mに満たない会社を対象としており、主に個人事業主や小規模の家族経営企業などが該当します。
案件の内容はLMM, MMと比較してそこまで複雑ではないものの、正確な財務情報が管理されていない、一部ライセンスや許認可などの法令に順守できていない、税金の支払い漏れ、契約内容の不備など、小規模会社ならではの案件リスク等も散見されます。
アメリカにおける中小企業の位置付け
Small Business Administration (“SBA”)
米国中小企業庁の定義では従業員500名未満の企業をSmall Business (中小企業) と呼称しており、その数は米国企業全体の大部分を占めております。中小企業の中でも従業員が1-4名程度である企業は全体の約半分を占めており、米国に存在する事業のほとんどは個人事業主や小規模の家族経営のビジネスであると考えられています。
中・大型案件に比べるとあまり認知度はありませんが、同サイズ帯でのM&A取引も非常に盛んに行われており、その多くは不動産ライセンスを保有したブローカーやエージェントによって事業仲介といった形式で取引が行われています。
(Source : https://www.pewresearch.org/short-reads/2024/04/22/a-look-at-small-businesses-in-the-us/)
アメリカの中小企業が投資対象として魅力的な理由
日本では近年、中小企業における後継者不足が叫ばれていますが、この事象は日本が比較的早く直面しているだけであり、米国も例外ではありません。
米国国勢調査局によれば、米国の雇用者がいる中小事業のうち、半数以上は引退を迎えたオーナー、あるいは引退を控えた55歳以上の人々によって運営されているといったデータがあります。雇用者がいる事業の経営者の74%は、引退を考える際に、事業の所有権を売却または譲渡する計画を立てています。
一方で、従業員を雇っていない事業主では、所有権を売却や贈与によって譲渡する計画を考えているオーナーはわずか35%にとどまっており、約27%は事業を閉鎖する予定、残りの40%は将来の計画が未定だと回答しています。
このように日本と同様、優良事業であるものの、後継者がいないとった理由で閉業せざるを得ない事業が米国にも数多く存在しています。こうした事業は、後継者不足の一方で安定した顧客基盤を持つケースも多く、投資機会として注目されています。
(Source: Most Small-Business Owners Lack a Succession Plan)
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