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アメリカM&Aアドバイザーの種類と役割|投資家が知るべき選び方

    前回の記事ではアメリカにおけるM&A市場の概観と企業規模別の分類(Large / UMM / MM / LMM / Micro) についてご紹介しました。また、アメリカにおける事業の大半が中小企業に該当し、後継者不足などの問題から買収のチャンスがたくさんあることもおわかりいただけたかと思います。今回の記事では実際のM&Aを行う際に必要不可欠なM&Aアドバイザーの種類、中小企業仲介を斡旋するブローカーの存在、その他M&A取引に係りを持つ事業体についてご紹介します。

    企業規模別に見るアメリカM&Aアドバイザーの種類と特徴

    M&Aにおけるアドバイザーの役割

    M&Aを行う際には財務・法務・税務・人事・ITなどの様々な専門知識が必要とされる為、時にビジネスの総合格闘技と呼ばれることもあります。個人事業主や中小企業のオーナーの方にとっては自身が運営している事業については詳しく知っているものの、M&Aのプロセスや必要となるタスク・法令順守などに関してはなじみがないといった方がほとんどになるかと思います。アメリカでM&Aを行う投資家や企業にとって、M&Aアドバイザーは案件全体を監督し、会計士・税理士・弁護士など様々な専門家とのコミュニケーションやサポートを行い、案件を成功に導いていく黒子のような役目を担っています。M&Aでは案件の規模や会社の性質、買収・売却スキームなどの複雑性などによって関与されるM&Aアドバイザーの種類も様々です。ではそれぞれの企業サイズごとにどのようなM&Aアドバイザーが存在しているのでしょうか。

    企業サイズ別M&Aアドバイザーの種類

    【大規模案件を扱うM&Aアドバイザー】

    Bulge Bracket / Elite Boutique

    Bulge Bracketとは主に数千億~兆円単位の大型案件を取り扱うM&Aアドバイザーです。現在は欧米の主要9社(Goldman Sachs, JP Morgan, Morgan Stanley, Bank of America, Citi Group, Barkleys, Credit Swiss, UBS, Deutsche Bank AG) がBulge Bracketとされています。また、Bulge Bracket各社ではM&Aアドバイザリーのサービスだけではなく、IPOやDebt, Equity Financingなどの資金調達サービスも提供しています。対してElite Boutiqueとは資金調達などのサービスは行わずM&Aアドバイザリーに特化したファームとなっています。著名なElite BoutiqueとしてはCenterview Partners, Evercore, Lazard, PJT Partnersなどが挙げられます。

    【中規模案件を扱うM&Aアドバイザー】

    Upper Middle Market (UMM)

    Upper Middle MarketにおけるM&Aのサイズは数百億円から数千億円を対象としており、同サイズ帯におけるアドバイザーは案件の性質や複雑さによって、Bulge Bracket / Elite Boutique, 後述のMiddle Market Firmなどが該当します。

    Middle Market Firm (MM)

    Middle Market Firmは数十億円~数百億円、時に千億円単位の案件を取り扱うM&Aアドバイザーです。基本的にはアメリカ内の各地域にオフィスを構えて、地域ごとの中・大規模案件に対応できる仕組みを構築しています。著名なMiddle Market FirmはHarris Williams, STIFEL, William Blair, Houlihan Lokey, Lincoln Internationalなどになり、日本人にとってはあまり聞きなじみのないファームが多いです。しかしHoulihan LokeyやLincoln Internationalは東京にもオフィスを構えており、日本におけるM&Aアドバイザリー業務も提供しているので、アメリカ市場でのM&Aや投資を検討する企業にとっても身近な存在です。

    Lower Middle Market Firm (LMM)

    Lower Middle Market Firmは数億円から数十億円単位の比較的小規模な案件を取り扱うM&Aアドバイザーです。LMMファームは特定の地域や業種に特化してサービスを提供している場合が多く、ファームとして全国展開するということはほとんどありません。ファームの規模としても数人程度から十数人程度であり、場合によっては個人で運営しているケースも散見されます。

    【小規模M&Aを支えるM&Aアドバイザー】

    Micro

    LMMでも取り扱わない規模の小さなM&A案件についてはビジネスブローカーの得意領域になっており、主に不動産エージェントやブローカーによって取引が行われています。飲食店やヘア・ネイル・まつげパーマを始めとする美容サロンは不動産のリース契約等が案件のメインになるケースが多く、州によってはビジネスブローカーとして活動する際に不動産ライセンスを必須としている場合もあり、カリフォルニア州においても不動産ライセンスが必要となります、弊社Business MAでは不動産ライセンスを有したエージェントが投資家の皆様にスモールビジネスの仲介から数億円規模までの小規模M&Aについてアドバイザリーサービスを提供しています。

    アメリカのM&Aに関わる主要専門家を解説|投資家が知るべきサポート体制

    公認会計士 

    M&Aを行う上で最も気になる点といえば会社をいくらで売却・買収するかというところであるかと思います。企業の価値を算定するために行われるのがバリュエーションですが、その情報源となるものは企業の財務諸表になります。しかし、会計事務所から監査を受けている場合を除いて、対象会社から提出された財務諸表は基本的にその正確性が必ずしも保証されているわけではありません。そこで、財務情報がある程度信頼性のおける内容であるものかを確かめる目的として財務デューデリジェンスを実施します。財務デューデリジェンスでは会計方針に準拠しているか、会計処理の妥当性、運転資本の水準など様々な事項を検討します。このように財務デューデリジェンスの実施は会計の専門知識が必要となる為、基本的には資格を有している公認会計士に依頼することになります。

    税理士 

    税務上の様々な論点の検討はM&Aの実施あたって非常に重要な役割を担っています。資産譲渡や株式譲渡、海外の会社を買収・売却する際のスキーム、移転価格税制や過年度の税務申告の妥当性など案件にもよりますが、検討事項は多岐に渡ります。税金の種類についても、連邦税から州税・地方税などが存在し、特にアメリカにおいては州ごとに税制が異なる場合も多く存在しますので、税務面でのデューデリジェンスについては資格を有している税理士に調査を依頼することになります。しっかりと税務スキーム等を考案して買収・売却を行うことで、支払わなければならない税金を格段に抑えることができる可能性がある反面、税制に適していない処理を行ってしまった場合には税金を多めに払わなければならない、あるいは追徴課税といったリスクも生じてしまうため、入念な検討が肝要となります。

    弁護士

    法務論点についてもM&A実施においては非常に重要な検討事項となります。アメリカは訴訟の国とよく言われますが、実際従業員と雇用主、サプライヤーとディストリビュータなど事業関係者の間で日々様々な訴訟が起こっています。特に企業を買収する際には、現在係争中である事案はないか、オーナーが変わることによって発動するCoC条項 (“Change of Control”)などは存在しないかなど検討事項は税務同様多岐に渡ります。案件終盤ではSPA (“Stock Purchase Agreement”) 株式譲渡契約書やAPA (“Asset Purchase Agreement”) 資産譲渡証明書を作成することになりますが、法務的な側面できちんと契約として効力を持つかどうか、自分にとって不利な条件になっていないかなど、買手・売手の双方がサインを行うまで交渉を行うこととなります。アメリカの契約書は日本の契約書に比べて、内容が詳細に盛り込まれていることが多く、州ごとによっても法律は異なるので、アメリカ案件を行う際は現地の知識・経験を豊富に有した弁護士を法務アドバイザーとして起用することが求められます。

    まとめ

    このように、企業規模ごとに異なるM&Aアドバイザーの役割を理解することは、アメリカ市場で投資を成功させる鍵になります。弊社Business MAでは日本語が話せる投資家ビザ専門の移民弁護士や公認会計士を自社に抱えていることに加え、カリフォルニア州最大手移民弁護団WR Immigration、複数の日系移民弁護士事務所と提携しております。投資家ビザから永住権の取得に成功した経営者によるノウハウを提供を行なっております。初回のコンサルティングは無料にて行っておりますので、アメリカでM&Aをお考えの投資家・ビジネスオーナーの皆様は是非お気軽にご相談いただければと思います。